T也さんは大学を卒業し、入社10年目の中堅社員になった頃、どうしょうもない体のだるさに襲われました。
何をしてもだるく、おっくうで微熱もあり、体重も減少してきました。
上司は精神的なものを疑ったようですが、内科を受診(平成22年10月)し、検査をしたところ、尿蛋白が出ていると分かりました。
思い出せば就職する際、会社に診断書を提出するため、近くの病院を受診したとき尿蛋白を指摘されていましたが、特に治療の指示もされなかったので、そのままにしていたようです。
検査の結果を受け、腫れ物に触るような恐る恐るの生活が1年ほど続きました。
T也さんの場合、慢性腎炎から慢性腎不全に進行し、左右共に障害になっているので、一方が健全である確率はとても低いようです。
この間も体調が優れないことや医師の指示もあり、会社も休職して安静に努めましたが、次第にT也さんの腎臓は機能を失い、尿が出なくなってしまいました。
そして、とうとう人工透析の導入(平成23年9月)となりました。
現在は、会社の理解もあり職場に復帰し、疲労を蓄積しないよう気を付けていますが、身の周りなどについても支援を必要としています。
腎臓病は長い時間をかけて症状が進みますので、過去に受診歴がないか聴取しました。
結果、初診日は(平成22年10月)となります。
障害認定日は通常ですと、初診日から1年6ヶ月となりますが、人工透析の場合、透析開始から3ヶ月経過日となりますので、平成23年12月が障害認定日となることを説明しました。障害認定日要件はこちら
初診日において厚生年金保険に加入中であり、直近1年間の納付要件で問題無いと判断しました。
認定日請求による障害厚生年金として請求しました。
T也さんから、現在までの症状や日常生活の状況をヒアリング(約1時間半)し、病歴就労申立書を作成。
医師に診断書の作成を依頼して、出来上がるまで約3週間要しました。
また、面談・電話による打ち合わせは、計4回(約3時間程)行い、最初のご相談から年金の申請まで、約1ヶ月半を要しました。
ご相談(初回のご相談は約1時間半) 面談により発病から現在までの状況をヒアリング |
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病歴・就労申立書の作成(約1週間で作成) 面談でヒアリングした内容を時系列にまとめ書類を作成 |
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診断書の作成依頼(約3週間を要しました) 医師に作成依頼 |
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他の書類の整備・書類の取得 請求書等の記載と住民票等の取得 |
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年金事務所に請求書の提出 申請後、約2ヶ月で年金証書が届きました |
年金の申請を行ってから約2ヶ月で年金証書が届き、障害厚生年金の2級に該当しました。
その後T也さんは仕事に復帰し、収入を得ながら障害厚生年金も受給しています。
腎疾患による障害については、次のとおりです。
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 |
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 |
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定します。
区分 |
検査項目 |
単位 |
軽度異常 |
中度異常 |
高度異常 |
ア |
内因性クレアチニン クリアランス値 |
ml/分 |
20 以上 30 未満 |
10 以上 20 未満 |
10 未満 |
イ |
清クレアチニン濃度 |
mg/dl |
3以上5未満 |
5以上8未満 |
8以上 |
ウ |
1.1日尿蛋白量 |
g/日 |
3.5g以上を持続す |
||
2.血清アルブミン |
g/dl |
かつ、 3.0g以下 |
|||
3.血清総蛋白 |
g/dl |
又は、 6.0g以下 |
(注)「ウ」の場合は、①かつ②又は①かつ③の状態を「異常」と言います。
区分 |
一般状態 |
ア |
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ |
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ |
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ |
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 前記(4)に示す検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 |
|
3級 | 前記(4)に示す検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
なお、障害の程度の判定に当たっては、前記(4)の検査成績によるほか、他覚所見、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定します。
社会保険労務士
内 山 修
うちやま おさむ
北海道池田町出身
1968年生れ
北海道中川郡池田町で生れ育ちました。 昭和63年に公務員となり、社会保険庁に入庁し、障害年金等の年金審査業務に携わっておりました。
困っている方のお役に立ちたいと思い、平成23年に社労士の資格を取得。「相談して良かった!」と言って頂けるサービスや信頼関係を築き、一人でも多くの方が適正な等級で 障害年金を受給できるよう、親身になってご支援いたします。